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地価下落政策

ふと思う。地価の上昇は、経済成長の象徴だなんて、だれが言い出したんだろうか?
みかけ上の地価上昇は、物価上昇率や為替相場を勘案したときに、単にインフレーションの影響だったり、グローバルマネーの国際間移動だったりするかもしれない。もちろん街自体に人口が集中し、限られた資源である不動産に需要が集中すれば、当然の経済原理として地価は上昇するだろう。だが・・・地価の上昇によって、再開発利益をもくろむ事業者から明け渡し交渉を受けたり、固定資産税が上昇したり、隣接地と自らの土地において、自らが営む商売や利用方法との連続性がとぎれとぎれになって街並みがちぐはぐになったり、さまざまな理由によって住み慣れた街を離れざるをえなくなることもあるだろう。
デベロッパーの経済合理性だけをいえば、建物の高層化・耐震化・耐火構造化が進むことで、敷地の有効利用が図られ、また災害に強い、住みよい街が形成されるともいえる。再開発を可能にする経済合理性は、開発利益であり、その開発利益の多くは、経済成長に伴う(地価上昇を背景とする)売却益であったり、高額な家賃だったりする。しかしもう、大勢の人が気が付いていることだろう。似たような街並みが全国あちこちにつくり出され、あたかも全国展開を目指すテナント企業とデベロッパーの合弁事業のような大型ビルや商業施設が乱立してしまった。全国で、みな同じ商品やサービスを享受することができることは決して非難されるべきことではないが、それが地域の活性化や雇用創出、個性化に寄与しているか、といえば必ずしもそうとはいえない。むしろ創意工夫のなさばかりが、目立ってしまう。それは本来意図した開発ではなかったはずなのに、である。
そもそもの発端は、地価を上昇させようとする政策そのものなのではないか、と地方の割高な固定資産税をみるたびに思う。もう五年も前のこと、ある人口五万人程度の町の話だが、固定資産税の課税標準額が、実勢不動産価格よりも高かった。最初に調べた時は、自分が間違えたのだろうと思っていた。しかし地元の誰に聞いても、固定資産税課税標準額で取得しようとする買い手はいなかった。通常、固定資産税の課税標準額は、不動産鑑定評価でいう、「正常価格」の七割を目安に設定されているはずなのに、である。もちろん不動産の価格は、取引事例に基づく比準価格ですべて決まるわけではない。しかし「買い手」がいない、という現実は、その不動産がよほど特殊な事情を抱えていない限り、正常価格が異常である、という結論にならないだろうか。もしかすると地方自治の財源は、固定資産税に依存しすぎているのかもしれない。法人税や所得税といった、基幹税収をすべて国に押さえられ、地方自治の現場が唯一勝ち取ることができた税収が固定資産税・都市計画税なのかもしれない。そして税制の応能原則・応益原則に従い、高い価値の土地からは高い税収、低い価値の土地からは低い税収というロジックが組み立てられたのだろう。制度を作ったときはそれでよかったかもしれない。しかしいまは、全国に同じようなものが同じようなスピードで提供されるぐらい、我が国は豊かになった。また急速に高齢化がすすみ、低コストで質の高い福祉を提供するべき必要性に迫られている。そんなときに、高度経済成長モデルの、税制に地方自治が頼っていていいのだろうか?固定資産税や都市計画税を課税しない県や地域があってもいいのではないか。
産業誘致のため、という小さな地域を指しているのではない。もっと大きな次元でとらえたときに、たとえば富山市や青森市が試行するコンパクトシティを実現するための施策になるかもしれないし、子育て世代にマイホーム取得の夢を実現させるきっかけになるかもしれない。財源を縮小すれば、必然的に事業を絞り込まざるをえなくなる。期待を込めていえば、交差点の改修事業や歩道設置事業など、街の環境を良くするような事業に選択投資されるようになるだろう。
地価を下げよう。いままでだれも言わなかった政策を掲げたら、まったく異なる都市計画や地域発展計画、福祉政策、交通計画、産業政策などが生まれるのではないか。まったく異なるビジネスモデルが生まれ、新しい雇用や経済発展がはじまるかもしれない。考えるだけでもわくわくするではないか。どうしてやらないのだろう。どうして、与えられた制度のうえでしか、ものごとを考えることができなくなってしまっているのだろう。貰わない。そこからはじめれば、地方自治も元気になるのではないか。かつて東京都知事がホテル税をはじめたときのような、思い切った発想が地方を豊かに変えるのではないか。

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