水滸伝
北方謙三著の水滸伝全19巻を完読した。いやあ、私がかつて読んだ一作品では指輪物語以来の活字数だったに違いない。第一巻を手にしたのが、去年の夏だから、約一年読破にかかったことになる。進んだ時期は、一か月に二冊読んでいたが、年が明けてからは三四か月、空白の時期もあった。それでもストーリーを覚えていられるのは、登場人物ひとりひとりが、ひととして深みのある味のある人物としてしっかり描かれているからだろう。108人という数字は、後半になってようやく本文に出てくるようになる。実際、108人の登場人物がいたかどうか、正確な記憶はない。しかし膨大な数の登場人物に、まるで意思を持って生きているかのような表現を与えている。これはすごい。
もともとハードボイルドの作品を読まない。これはひとから勧められて読み始めたにすぎない。しかし、読みごたえは十分にあった。なにを感じた、なにを学んだ、という夏休みの読書感想文のような感想はない。ただ読んでよかったと思う。負け戦のなかで、いかに志を失わず、いかに自分の信念のもとで自分の生き方を貫くか、いまの私自身の状況に照らすと考えさせられるものが多い。
勤務先の株価がとうとう100円をきった。通常、上場している会社の株価が100円を下回るということは、ゴーイングコンサーンの信任を市場から与えられていないことに等しい。水滸伝終盤の、梁山泊陥落寸前の描写は、M&Aを仲介するコンサルティング会社が会社の会議室に常駐し、経営陣が総出で外資系金融機関に出資を要請している姿と重なる。ああ、そういう状況なのね、と。
世間では、北京オリンピックや高校野球が開催中らしいが、とても喜んで観戦する気分にならない。それは負け戦のただなかにいるからだろうか。しいて言えば、水滸伝は私にかっこいい「負け方」を教えてくれたのかもしれない。
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